就活の第一関門であるエントリーシート(ES)は、面接に進めるか否かを左右する重要書類です。特に金融業界は業種の幅が広く、求められる視点や語るべき内容が明確です。本稿では「何を書くか」「どのように構成するか」を具体的に整理します。
■ 金融業界──まず押さえるべき主要業種と特徴
・銀行
- 主な業務:預金、融資、為替など。
- 特徴:法人融資や地域経済支援など、社会的インパクトが大きい。
- ESで使える切り口:与信審査や地域貢献、業務プロセス改善の志向性を示す。
・保険会社(生保・損保)
- 主な業務:リスク商品(設計・販売)、保障設計。
- 特徴:商品企画や顧客接点(対面・ネット)の違いが評価ポイント。
- ESで使える切り口:ヒアリング力、データ収集・分析、商品設計志向を強調。
・証券会社
- 主な業務:株式等の売買仲介、資産形成支援、投資サービス。
- 特徴:リテール/ホールセールで求められるスキルが異なる。
- ESで使える切り口:数字に強いこと、投資教育や顧客提案力を示す。
→ 業界理解は「志望動機の説得力」と直結します。志望先ごとの役割差や業務プロセスを調べておきましょう。
■ ESの主要項目と「書き方の型」
以下は金融業界で良く問われる項目と、書き方のポイントです。
1) 志望動機(最重要)
・構成
- 結論(なぜ金融業界/なぜこの会社か)
- 根拠(企業の何に共感したか・どの事業が魅力か)
- 自分との接点(経験やスキルとの関連)
- 入社後に実現したいこと(具体的な貢献イメージ)
・注意点:抽象的な「やってみたい」ではなく、企業固有の事業や指標(例:与信モデル改善、解約率低下、顧客LTV向上)に結びつける。
2) 自己PR
・構成
- 強み(端的に一言で)
- 根拠(なぜそう言えるか)
- 具体エピソード(行動・数字・結果)
- 入社後の転用(業務でどう活かすか)
・金融向けの例:分析×実行力、ヒアリング×提案力、計画遂行力などを数字で補強。
3) 学生時代に力を入れたこと(ガクチカ)
・評価軸:課題認識→仮説→行動→検証→成果→学び(STARを意識)
・面接で深掘りされる前提で、意思決定理由や周囲への働きかけまで整理しておく。
4) 大学の専攻/研究
・専攻と業務の接続を意識する(例:統計手法→データ分析、都市計画→不動産ファイナンスなど)。
・専門用語を噛み砕いて非専門家にも伝えられる説明力を示すと高評価。
■ ES作成の推奨手順(実務的)
- 業界・企業研究を徹底する
- 説明会、インターン、OBOG訪問で「HPにない情報」を得る。
- 自己分析を深掘りする
- 成功体験・失敗体験を書き出し、行動パターンや価値観を把握。
- 自己PRの骨子を作る
- 強みを一つに絞り、根拠(数字や役割)と再現計画を用意。
- 志望動機を企業特化で仕上げる
- 「なぜこの企業か」を明確にし、入社後の貢献像(短期・中期)まで書く。
- 推敲と第三者チェック
- 一文一意・主語述語を近づける・専門語の誤用に注意。先輩やキャリアセンターで確認。
■ すぐ使えるES例(要約)
- 銀行(志望動機)
「説明会で○○事業の××な取り組みに共感。企業の与信プロセス改善に携わり、審査リードタイム短縮で中小企業支援を強化したい。」
- 保険(自己PR)
「私の強みは『行動力×計画力』です。ゼミで行ったフィールドワークでは約200名に聞き取り、事前準備の徹底で有益データを収集しました。入社後は商品企画や顧客ヒアリングでこの力を発揮します。」
■ 最終チェックリスト(提出前)
■ 志望動機に「この社ならでは」の根拠があるか
■ 自己PRは一貫した強みで、具体的エピソードが数字で裏付けられているか
■ ガクチカは「過程」が十分に説明されているか(課題→施策→結果→学び)
■ 専攻やスキルの業務適用が明確に書かれているか
■ 抽象語(「頑張ります」等)で終わっていないか
■ 一文一意、誤字・専門語の誤用はないか
■ まとめ
金融業界のESは「業界理解」と「自己理解」を掛け合わせ、自分の経験を“業務成果に変換する言葉”で表現できるかが勝負です。業界研究で得た知見を根拠に、具体的な数字や行動の再現性を示してください。丁寧な自己分析と企業理解が、書類通過率を大きく高めます。